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WEB MAG #13 実はSDGs? “割り箸”のこと

割り箸(わりばし)は、日本の伝統的な食文化の一部であり、その便利さから多くの飲食店や家庭でも使用されています。

割り箸は日本で生まれ、平安時代には既に使用されていたと言われています。一般的に広まったのは江戸時代以降。
割り箸をパキッと割ることには、祝い事や神事などにおいて「事を始める」という意味があり、大切な場面や来客をもてなす際などに使われる「ハレの日」の食器でした。

時代は移り、今では衛生面や手軽さから様々な場面で重宝されており、日本の割り箸の使用量はピーク時には年間250億膳、現在は150〜200億膳にもなると言われています。

200億膳と聞くと、とんでもない量の木材が消費されていると感じられるかもしれません。
割り箸を使うことは、しばしば環境破壊の象徴として批判されることがありますが、実際には必ずしも環境破壊に直結するわけではありません。
ここでは、割り箸と森林環境、その捉え方についてご紹介していきます。


割り箸になる木材について

国産の割り箸の製造に使われる木材の多くは、間伐材や廃材です。間伐(かんばつ)とは、森林の健全な成長を促進するために密集している木を間引く作業であり、これは森林管理の一環として必要なプロセスのこと。間伐材を利用することは、無駄なく資源を活用するということであり、森林の健全な成長を支えるこにつながります。このような持続可能な森林管理の観点から見ると、割り箸の使用は森林破壊とは対極に位置するとも言えます。

さらに、日本の割り箸生産者は、環境保護に配慮した方法を採用しています。例えば、多くの割り箸は、竹や間伐材を原料とし、再生可能な資源を活用しています。竹は成長が速く、持続可能な資源として非常に優れています。また、廃材を利用することで、新たな森林伐採を減少させる効果もあります。


間伐とは?

間伐(かんばつ)とは、森林管理の一環として行われる作業の一つで、林の中の過密状態を緩和し、残された木々の健全な成長を促進するために一部の木を伐採することです。


その目的

1.  森林の健康維持
樹木の成長促進:
過密な状態にある森林では、樹木が互いに競合し合い、十分な光、空気、水、栄養素を得られなくなりる。間伐により、残された樹木にこれらの資源がより行き渡り、健全に成長することができる。
病害虫の予防:
過密な森林は病害虫の温床となりやすい。間伐を行うことで、樹木間の距離を広げ、風通しを良くし、病害虫の蔓延を防ぐことができる。

2. 生物多様性の向上
多様な植物種の育成:
間伐により森林の下層に光が届きやすくなるため、下草や低木などの多様な植物が成長しやすくなる。これにより、森林の生物多様性が向上する。
野生生物の生息環境改善:
多様な植物が生育することで、多様な動物の生息環境が提供され、森林生態系全体の健康が維持される。

3. 水源涵養
土壌の保護:
過密な森林では、樹木が競合し合い、根系が発達しにくくなる。間伐により根系が強化されることで、土壌がしっかりと保護され、土壌浸食を防ぐことができる。
水質の向上:
健康な森林は、降雨を効果的に吸収し、浸透させることで、地下水の補給や河川の流量が安定。また、間伐により土壌が保護されることで、土壌流出が減り、水質の向上にも寄与する。

4. 経済的な利点
木材の品質向上:
間伐を行うことで、残された樹木に十分な資源が供給され、質の高い木材の生産が可能に。これにより、経済的価値の高い木材を市場に供給することができる。
持続可能な林業の実現:
間伐により森林の健康が維持されることで、持続可能な形で木材を生産し続けることが可能となる。これにより、林業従事者の生活を安定させることができる。

5. 防災効果
山火事のリスク軽減:
過密な森林は山火事のリスクを高めるため、間伐により森林の密度を適切に管理することで、火災の拡大を防ぐことにつながる。
土砂災害の防止:
健全な森林は土砂災害の防止にも寄与する。特に傾斜地では、間伐により樹木の根系が発達し、土壌をしっかりと固定することで、土砂崩れを防ぐ効果がある。


効果

光の確保
間伐によって森林床に光が届きやすくなり、下層植生の生育を促進。

水分の管理
間伐により土壌の水分が適度に保持され、水質の改善や洪水防止につながる。

生物多様性の保全
適切な間伐により、様々な植物や動物が共存できる健全な生態系が維持される。


間伐は森林の健康を保つために欠かせない作業です。過密に成長した木々を適度に間引くことで、残った木々に十分な日光や栄養が行き渡り、森林全体の生態系が健全に維持されます。
この間伐材の有効利用の一つとして、割り箸が挙げられます。割り箸を製造することも、間伐材の需要が生み、林業の持続可能性を高める一助となるかもしれません。


国産の割り箸を使うことが重要

現在、日本で使われている割り箸の90%以上は輸入品ということをご存知でしょうか?
そのほとんどが低価格の中国産です。間伐材ではなく、丸太を使用するパターンが多いため、森林の減少が懸念されているそうです。

国産の割り箸は国内で育った木材を使用しています。
これらは国内の厳しい品質管理基準に従って製造されているため、品質が高いものが多いそうです。
しかし、コスト的には輸入品に比べて高くなる傾向にあります。

輸入割り箸に使われる原料となるのは、主に違法伐採や過剰伐採された木材だと言われています。
さらに言えば、輸入品は長距離輸送が必要であり、その過程で大量の化石燃料が消費され、CO2が排出されます。

国産の割り箸を使用することで、日本国内の森林管理も促進されます。日本の森林は、適切な管理と利用が行われることによって、持続可能なかたちで利用することができるからです。
海外から輸入された割り箸は、環境保護の観点から持続可能でない場合が多く、乱伐や森林破壊の一因となることがあります。

「割り箸を使うこと」そのものがエコロジカルである、というわけではなく、どこで作られたどんな割り箸を使うのか、ということがSDGsの観点から見ると重要なんですね。


国産割り箸の利用推進やリサイクルの事例

日本の大手外食産業やコンビニチェーンでも、国産の割り箸の使用が推進されています。
牛丼の「吉野家」や「すき家」では国内の森林資源を有効活用するために、国産の割り箸を使用しています。
サイゼリヤでは、国産の割り箸を導入する取り組みによって、環境負荷の軽減と国内の林業支援を図っています。
無印良品やセブンイレブンでも国産の割り箸を使用する方針を示すなど、環境保護の活動の一環として取り組む企業が多くあります。


割り箸リサイクル

使用した後の割り箸を、ただゴミとして捨てるのではなく新たな価値をつくり再利用する、という取り組みが行われています。

日本の森林のみらい「割り箸リサイクルプロジェクト」

持続可能な森林環境を確立し、人と森林の豊かな未来を目指す一般社団法人 日本の森林のみらいは、使用済み割り箸を回収し資源として再利用する「割り箸リサイクルプロジェクト」を開始しました。
「割り箸リサイクルプロジェクト」は、飲食店や商業施設のフードコート、スーパーなど割り箸を利用、配布している事業者様に使用済み割り箸を回収・送付いただき、参加企業によってチップ化したものを製紙工場にて紙として生まれ変わらせるプロジェクトです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000109192.html


王子ホールディングス割り箸リサイクル運動

王子グループでは、環境保全の重要性、資源を大切にすること、すなわち日々暮らしている生活現場の環境を「住民・企業・行政・学校」が一体となって良くして行こうという活動精神をもとに、使用済みの割り箸を回収し、リサイクルを行っております。
各工場では種々の紙製品を作っておりますが、皆様の身近で使用されておりますコピー用紙・上質紙・印刷紙・ポスター・ティシュなどに割り箸が活用されております。
割り箸はお送り頂く工場での製紙原料の一部になっており、割り箸だけで紙を作るわけではありませんが、割り箸だけで紙製品を作ったと仮定した場合の換算値はおおよそ下記のようになります。
割り箸 10kg(約2,500膳) → ボックスティシュ15箱
割り箸 3膳(6本) → はがき1枚、又は、A4サイズのコピー用紙1枚
2018年度の割り箸回収量は、93トンでした。

https://ojiholdings.disclosure.site/ja/themes/129/

竹割り箸を再利用したアップサイクルテーブル「TAKEZEN TABLE」

普段何気なく使用し、廃棄されている割り箸。私たちが使用している割り箸の98%は海外からの輸入品です。しかし、3~4年かけて成長し、製造され、消費者の手元に届くまで数週間かけて運ばれている割り箸は、たった数時間の使用のみで大量に廃棄されています。
割り箸には木製・竹製の2種類があります。木製割り箸は紙などに再利用されますが、竹製は紙の原料になるチップにすることができず、繊維が残ってしまうという問題から再利用することが難しいとされています。

この問題を解決するために生まれたのがTerrUPの竹割り箸を使用したアップサイクルテーブル、TAKEZEN TABLEです。

代表の村上勇一が飲食店で働いていた際に宴会後に大量的に捨てられる割り箸を見て、割り箸を木材という”材料”として再生できないかと考えたことが開発のきっかけとなりました。その後、割り箸卸業者や成形加工業者といった企業と協業し、使用済み割り箸の回収、回収した割り箸の成形などの仕組みを構築しながら、竹割り箸のデザイン性・特性を最大限に活かした商品を開発しました。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000127716.html


こちらで紹介する例はごく一部。このように、使用済みの割り箸を集めて再加工し、新しい製品として生まれ変わらせるプロジェクトが展開されルナど、割り箸のリサイクルや再利用の取り組みも進んでいます。

もちろん、割り箸の大量消費が全く問題ないわけではありません。無駄な使い捨てを避け、必要なときに必要な分だけを使用するという意識が重要です。
しかし、適切に管理され、持続可能な資源を利用した割り箸は、必ずしも環境破壊の原因とはならないのです。むしろ、適切な森林管理や資源の有効活用を促進する役割を果たすことができます。
割り箸は日本の林業とも関連しており、森林資源の有効利用、地域経済の活性化、そして環境保全という多面的な視点から重要な役割を果たしています。
その利用にあたっては持続可能性を考慮した取り組みが不可欠です。適切な管理と消費者の意識向上が大切なんですね。