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WEB MAG #17 ウッドチップの活用と展望

木材を細かく砕いたりカットして作られる“木質チップ”。
木材チップ、ウッドチップなどとも呼ばれています。

今回は、このウッドチップがどんなことに使われているのか、
また、どうやって作られているのかという製造までの経緯や背景、そしてその効果についても
ご紹介していきます。

上の写真のようなウッドチップ、皆さんも一度は見たことがあるのではないでしょうか。
身近な例で言うと、お庭の植栽や公園の遊び場、ドッグランなどにも利用されています。

廃棄されるはずの木材を加工して作られるウッドチップ。
環境に優しいだけでなく、雑草・ぬかるみの対策や、消臭・防腐・防虫効果もあるなど、様々な利点があります。


どんな木材から作られているのか?

木質チップの原料となる木材は、以下のようなものです。

間伐材:森林の成長を促進するために間引きされた木材。
製材廃材:製材所から出る端材や不要な部分。
倒木や枝など:自然に倒れた木や伐採後の枝など。
木クズや樹皮:製材過程で生じる副産物。
建築廃材:解体現場で発生する廃材や梱包資材など。

こういった材料を破砕機で小さなサイズに破砕し、異物を取り除いたり乾燥させたりといった工程を経て、木質チップとなります。
粒度や用途によって、異なるサイズに加工されることもあります。例えば、バイオマス発電用の木質チップは、燃焼効率を高めるために一定のサイズに加工され、さらに品質規格が定められるなど、その用途によって細かく分類されているものもあります。

木質チップの主な用途

木質チップの活用事例を紹介します。

バイオマス発電の燃料
バイオマス発電の燃料として利用され、特に再生可能エネルギーの一環として注目されている。発電所でチップを燃焼させて蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回して電力を生成。

製紙用パルプ:
製紙の原料として。木質チップを薬品や熱で処理し、繊維を取り出して紙の原料となるパルプが作られる。

園芸や土壌改良:
園芸や農業でマルチング材や土壌改良材として使われ、雑草の抑制や土壌の水分保持に役立つ。木質チップを農地や庭に敷くことで、土壌の温度を調節し、雑草の繁殖を防ぐだけでなく、時間とともに分解されて有機肥料として土壌を改善るす効果もある。

建材:
ファイバーボードやパーティクルボードといった合板、MDF(中密度繊維板)など、建材の原料としても利用されている。断熱性能や吸音性能に優れており、一般的な木製品よりも安価である点もメリットとして挙げられる。


日本国内の発電電力量と、その電源別の傾向

2010年以降、日本の全発電電力量は大きな変化を経験しました。特に2011年の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故が転換点となり、多くの原発が安全基準の見直しに迫られるとともに再稼働へも慎重になり、結果として原子力による発電量が減少しました。
このような原子力発電の停止により、当初は電力不足を補うために火力発電が急増。特に液化天然ガスや石炭などによる発電は大きく増え、これが一時的に日本の電力供給の柱となりました。

一方で、2010年代以降、再生可能エネルギー(自然エネルギー)への転換が急速に進んでいます。

日本では2012年に「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT ※)」が導入され、太陽光発電への設備投資が急増しました。
FIT制度によって、自然エネルギーで発電した電力が高価格で電力会社に買い取られる仕組みができ、家庭用や企業の太陽光パネルの導入が活発化したのです。

FIT制度とは ※
経済産業省が2012年7月に開始した「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」のこと。再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電された電気を、国が定める価格で一定期間、電気事業者が買い取ることを義務付けるもの。
電気事業者が買い取りに要した費用は、使用電力に比例した再エネ賦課金によって賄うこととしており、電気料金の一部として、国民が負担している。

isep環境エネルギー政策研究所 2021年の自然エネルギー電力の割合より

上の図にあるように、日本国内の全発電 電力量の電源別割合の推計を見ると、2016年には約15%だった自然エネルギーの割合が、2023年は25.7%に達しており、その中でも特に太陽光発電とバイオマス発電が増加していることが分かります。


木質バイオマスエネルギー

近年、国内の木質バイオマス発電に関連する施設・設備は増加しています。

2012年〜
FIT制度の初期段階では太陽光発電が主流でしたが、バイオマス発電への関心も徐々に高まりました。
木質バイオマスは比較的安定した供給が見込めるエネルギー源であり、発電の規模や立地に応じた認定が進むこととなります。

2016年〜
この期間には、木質バイオマス発電の新設が加速。日本国内の森林資源の活用や、廃材を利用した発電の利点が再認識され、さらに大規模な発電所の建設も増加しました。この時期には、規模の大きい商業発電所がいくつも認定され、施設数も着実に増加していきます。

2021年〜現在:
最新のデータでは、FIT制度の下で認定されたバイオマス発電プロジェクトの数は引き続き増加しており、特に地域資源を活用した中小規模の発電所が増えています。また、バイオマス発電所の新規認定はやや鈍化していますが、既存のプロジェクトが次々と運転を開始しています。


木質バイオマス発電の燃料となる木質チップの需要は年々高まっています。
その理由や背景には、前述の通り、政府の政策的支援(FIT制度・FIP制度など)によるところもありますが、日本という国の特性に「木質バイオマス発電」の利点が合致する、ということも大きいでしょう。

日本は国土の約70%が森林であり、木材資源が豊富。しかし、長年にわたる林業の衰退と過疎化により、間伐材や林業廃材の利用が進んでいませんでした。木質バイオマス発電はこれらの未利用材を有効活用でき、森林の整備や地域経済の活性化にもつながります。

また、カーボンニュートラルや気候変動対策という面においても、再生可能エネルギーの比率を高められるという大きなメリットもあります。
そして、長らくエネルギー資源を輸入に依存していた日本ですが、国内資源の利用によるバイオマス発電によってエネルギー自給率の向上にも寄与できると思います。


木質バイオマスエネルギーとして利用した 木材チップの由来別利用量


木質バイオマス発電の燃料となる木質チップの需要は年々高まっています。

木質チップの原料となる木材がどんなものなのか、ということを表している上の図。
年々、「間伐材・林地残材等」が増えていっていることが分かります。
木材チップの由来別利用量の、「間伐材・林地残材等」の量は、2015年と比べると2022年は約3.8倍にも増えており、林野庁は林地残材の発生量に対する利用率をさらに高める方針も打ち出しています。

今後も、さらに未利用の木材が有効に活用されることによって、林地の有効活用、そして木質バイオマス発電も含めた再生可能エネルギーの利用促進、そして環境保護への寄与など、連鎖的な好循環が生まれることも期待されています。