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WEB MAG #2 “適材適所” 木の使い方のお話

  • 2023.05.24
    • ウェブマガジン

それぞれの役割にふさわしい人材を充てる“適材適所”という言葉。これは、もともと伝統的な建築現場における木材の使い分けに由来しています。
世界には約6万種類以上の木があると言われています。日本に生息する樹木種は1000種類以上。日本は地域によって気候や高低差など風土が違うため、比較的多くの木や植物が生えているとされています。

建築物や土木資材、家具、什器、工芸品、紙や資源利用など、様々な用途で使われる木材。素材となる木によって性質も多種多様であり、人は昔から木の性質を理解し、まさに適材適所で活用してきました。
ここでは、木材の種類と性質に応じた用途について、ご紹介していきます。

まず、建築資材や家具などで使用される木材の、針葉樹と広葉樹について。
針葉樹は軽くて柔らかい、広葉樹は硬くて重たい、という特徴があります。

《スギ》
針葉樹の中でも杉は、日本で一番多く植えられている木。
日本の固有種で、縄文時代から利用されてきた歴史があります。
成長が早く、すくすくとまっすぐに育つことから「直ぐ木(すぐき)」が名前の由来と言われています。
建築資材としても多く使われていますね。

日本で一番多く植えられている杉

《ヒノキ》
ヒノキも日本原産の木で、国内の針葉樹の中で最も良い木材とされています。
耐久性に優れており、カビやシロアリが嫌う成分をもっていることから、耐腐朽性においても秀でています。
世界最古の現存する木造建築“法隆寺”や伊勢神宮の遷宮でも建材として使われるなど、 時を越え継承すべきものに使われる木材です。

1300年以上の歴史をもつ法隆寺にはヒノキが使われている

《ケヤキ》
広葉樹は、針葉樹より重厚な種類が多く、材面の色や木目の美しさから、建築用途としては造作・内装材・化粧材として多く使われています。
日本を代表する広葉樹の王様、ケヤキは古くから寺社や城の建築に使われるほか、家具や彫刻材、椀物など、広く活用されてきました。

日本を代表する広葉樹のひとつ ケヤキ

《世界三大銘木》
ちなみに、「世界三大銘木」と呼ばれる樹種は広葉樹。ウォールナット・チーク・マホガニーの3つです。
木目が直線的で美しく揃っているため、無垢材として人気の高いウォールナット。
固く頑丈で、天然の油分を多く含んでおり、耐久性や温度の変化、水にも強いと言われるのがチーク。
他の樹種にはない色味と高級感、柔らかく加工しやすいという特徴をもつマホガニー。その人気の高さからワシントン条約で保護されており、入手困難なことでも知られています。

世界遺産コルドバ大聖堂 聖歌隊の椅子に使われているマホガニー

住宅や建物をつくる際、木の特徴を見定めて、昔の職人さんは適材適所で木材の使い分けをしてきました。
家の土台となる構造部分には耐久性が高く腐りにくい木材を。
内装の柱には木目が美しい木材を。
重量を支える梁には耐久性のある木材を。
このように、それぞれの特徴を活かし、適した所に適した材を使ってきました。その工夫は住宅建築の技術として、現代にも受け継がれているのです。

日本の住宅にも、木材の特徴に合わせて様々な木が使われています。

それぞれの木が持つ色合いや木目、強度、耐久性といった特性に合わせて、構造材や内装材として使い分けされているのです。
一般的に、柱や梁そして土台などの構造材に使う木材は、強度・耐久性・耐水性・耐蟻性などにすぐれた木材を使用し、床や壁などの内装材には色合いや木目、そして肌触りといった質感を重視した木材を使用します。柱のような構造材によく使われる木材としては、スギ、ヒノキ、ケヤキといった無垢材があります。無垢材の中でも、耐久性や強度に優れており、湿気やシロアリにも強いとされるヒノキは構造材に適しています。
また、同じ樹種だったとしても、樹齢はもちろん、木のどの部分を使うかによって、用途が適切であるかは異なります。

木が住宅に使われる理由のひとつに、断熱性に優れてることも挙げられます。断熱性能にも違いがあります。断熱性能は空気の隙間である空隙が多いほど、その性能は良くなります。そのため空隙の多い針葉樹のほうが断熱性能に優れているものが多いです。針葉樹のスギやヒノキを使った無垢のフローリングは、冬も足元が冷えにくく夏は素足で過ごしたくなる快適さが魅力です。

建築物だけでなく、私たちの身の回りの様々なものに木材は使われています。

バットに使われる木材として知られる「アオダモ」の木。強さ、しなり、飛距離、耐久性など様々な条件を満たしており、日本のプロ野球ではアオダモで作ったバットが人気のようです。
二刀流で有名な大谷選手は「イエローバーチ」という木のバットを使っているそうです。

ピアノに使われる部材の8割は木材。使用される種類は「スプルース」「カエデ」「ブナ」などがありますが、中でも代表的なのが「スプルース」。 スプルースは、楽器部材の中でも「音響伝播速度が速い」という音響特性に優れているのが特長です。

他にも、家具やギターなどの楽器、椀物などの器、まな板など、挙げればきりがないほど。
普段何気なく使っている様々なものにも木材が活かされています。