NEWS&TOPICS

新着情報

WEB MAG #5 森林の価値はいくら?

「森林の価値」を、もし貨幣で換算するなら、いくらになるでしょう。
まず、森林には様々な働きがあります。これは「多面的機能」と呼ばれ、「経済資源としての機能」と「環境資源としての機能」の2つに大別されます。


「経済資源」というのは、木材など資源が生産される場として、さらに動物などの狩猟、キノコや果実など食料生産の場としての機能のこと。資材や燃料、食料といった経済における価値を、市場で取り引きされる価格で換算すると、年間6,700億円にものぼるという試算が出ています。
「環境資源」とは大きく言えば、地球環境を保全する機能の総称です。森林には陸上の生物種の約8割が生息するなど、多種多様な生物の住処であり、生物多様性を維持する働きがあります。さらに、洪水や浸水を緩和し水質を浄化する機能や、土砂の流出や崩壊を防ぐ機能、二酸化炭素を吸収し貯蔵する機能、安らぎや憩いの場を提供する機能などがあり、「公益的機能」とも呼ばれます。

これら森林の持つ機能の一部を貨幣換算した試算が日本学術会議の答申にあります。それによると、貨幣換算できるものだけで年間およそ70兆円以上。
生物多様性保存機能などは貨幣換算できないとされており、実際の貨幣価値は評価額を大きく上回ることがわかります。

貨幣換算した機能と評価額
森林の多面的機能一覧

ざっと見るだけでも、森林がどれほど多くの機能と価値を有しているかわかりますね。


森林の多面的機能とは

《生物多様性保全機能》
森林は「生き物の宝庫」といわれるように、陸上の動植物の8〜9割、160万種以上の生物が生息しているとされています。森林には遺伝子や生物種、生態系を保全するという機能(生態系を守る機能)があります。 これを「生物多様性の保全機能」とよんでいます。 国土の約7割が森林の日本では、生物多様性が海外の高緯度地域や乾燥地帯などに比べてかなり高くなっています。
このように多くの生物が生息することで生態系が作られ、人間にも様々な恩恵があるのです。日々当たり前のようにこの恩恵を享受している私たちですが、森林の後輩が進むと生態系や多様性が崩れ、人間の暮らしにも影響が出ます。


《地球環境保全機能》
人間が健康で快適な生活を営めるように自然環境が保たれ、さらに環境諸条件が良い状態に保持される機能のことです。
地球温暖化の大きな原因である、人間の社会生活によって排出された二酸化炭素。森林の樹木が二酸化炭素を吸収することは、地球温暖化防止の働きがあります。日本の森林が光合成によって吸収する二酸化炭素は年間約1億トンといわれており、これは、国内の全自家用乗用車が排出する量の7割に相当します。


《土砂災害防止機能》
たくさんの樹々が生い茂る森林の土壌は、樹木の根が地中深くに伸びて土壌と岩盤を固定するため、山崩れや土砂の流出が抑えられています。また、表土は落葉や落枝などの多くの堆積物で覆われており、草や低木も多く生えていることで、降水があっても地面が直接雨に打たれにくくなり、土壌が流出しにくくなります。
森林と裸地を比較すると、土砂が流出する量は、森林は裸地の1/150という報告もあるそうです。


《水源涵養機能》
森林土壌は、よくスポンジに例えられます。森林に棲息する土壌生物の活動による孔隙(こうげき)と呼ばれる隙間が数多く存在し、降った雨は、その地面や土壌に蓄えられ、ゆっくり時間をかけて川へ送りだされます。このように、降った雨が一気に海へ流れ下ることなく、時間をかけて流れていくことにより、安定的に河川流量が得られることから「水資源の貯留機能」とも呼ばれています。
また、ゆっくりと川に送り出されることから降雨時における川の流量のピークを低下させたり遅らせる機能もあります。これは洪水の緩和機能と呼ばれ、特に、中小規模の洪水の場合に発揮されると考えられています。洪水や渇水が緩和されることから、森林は「緑のダム」とも呼ばれます。
さらに、雨水が森林を通ることで、リンや窒素などの富栄養化の原因となる物質は壌中に保留されたり、植物に吸収されたりする一方で、土壌中のミネラル成分などがバランス良く溶け出すことにより、森林はおいしい水を作り出すと考えられます。 森林には水質の浄化機能ともあるのです。

ここに挙げた例は、森林が有する機能のごく一部です。
その他にも、気候緩和(夏の気温低下など)や騒音を吸収するといった「快適環境形成機能」や
森林浴や行楽など、安らぎや憩いの場となる「保養・レクリエーション機能」、
自然とのふれあいの場や学習・教育における機会創出など「文化機能」など
貨幣換算できない機能まで含めると、森林は私たちの日々の暮らしだけでなく、地球に大きな恵みを与えてくれる機能を有しているのです。