持続可能な開発目標「SDGs」は、いまや小学校の授業に取り入れられるほど私たちに身近なものとなってきました。
多くの企業や自治体もSDGsに対するアクションに取り組んでおり、これからは「サステナブル(持続可能)」というキーワードはあらゆるプロジェクトにおいてますます重要視されるものとなってくるでしょう。
そんな中、「木材の可能性」への注目が高まっています。
木材は持続的に再生可能な資源であり、他の素材と比べてリサイクルしやすい材料です。また、木材を使うことで、二酸化炭素の貯蔵、排出抑制といった効果もあり、地球温暖化防止にも貢献できます。
「木材の使われ方」といえば、戸建住宅といった建築物、家具や什器などをイメージする方が多いと思います。
ですが近年、木材の使用用途は驚くほど進化を遂げているのです。
木材をふんだんに使った大規模建築として、皆さんにも馴染み深いのが「国立競技場」ではないでしょうか。
2019年に完成した東京五輪・パラリンピックのメイン会場。「杜(もり)のスタジアム」というコンセプトの国立競技場は、国産木材をふんだんに使用した、世界的にも珍しいスタジアムです。
ゲートの軒に使われている杉の木材は、47都道府県から調達されており、一番北側部分に北海道、南端には沖縄と、方位に応じて地域順に並べられているそうです。細部にこだわりながら、日本の伝統的な縦格子の要素を現代的にアレンジした建築となっています。
国立競技場には院庄林業の木材は使われていませんが、
実は、選手団の交流拠点となった「選手村ビレッジプラザ」に当社の柱材を提供させてもらっています。
高さ約85m、世界中から視察者が押し寄せる高層木造ビル
ノルウェーの小さな町ブルムンダルに2019年、当時で世界一高い木造ビルが完成しました。
—–Mjøstårnet(ミューストーネット)—-
オフィスやホテル、短期滞在用アパートなどから成る複合施設です。建物は18階建て、高さ約85.4m、総工費5000万ユーロ(当時のレートで約61億円)。事業者であるArthur Buchardt氏が、地元の素材を使用し、地元の生産者・企業による、世界一高い木造ビルをつくりたいと願い実現したもの。建物に使われた主な木材は、近隣の森のものだそうです。建物全体で約1400㎥の構造用集成材が使用されており、これらは、当施設から約15kmの距離にあるモエルフェン・リムトレ社の工場で加工されました。
竣工後は世界中から数千人もが視察に訪れるなど注目を集めており、「木材の地産地消」という命題と、「木造の可能性と未来」を提示するエポックメイキングとなりました。
世界最高182mの超高層木造ハイブリッド構造ビルを大林組が受注
完成すると、木造ハイブリッド構造としては世界最高182m(地上32階建て)もの高さとなるビルを、日本のスーパーゼネコンである大林組が受注しました。
本工事は、ニューサウスウェールズ州シドニー市にて、同市のイノベーションと技術の街区、Tech Centralの象徴となるオフィス、宿泊および店舗エリアを含む複合施設の建築工事で、7階から上階が鉄骨とCLT(※1)を採用した木造ハイブリッド構造となります。
また、同ビルの設計はLEEDやWELLなどのグリーンビルディング認証で最高レベルの認証を取得する仕様であり、建設中に排出されるCO2については通常の50%以下に抑制することを目標とします。
なお、この建物は完成後100%再生可能エネルギーでの稼働を目標としています。
大林組 プレスリリース より
建築物としての木材の可能性を紹介してきましたが、ここからは「え!こんなものにも木材が!?」という事例を一部ご紹介していきます。
《日本の間伐材から生まれた、木を纏う「究極のシャツ」》
間伐された木材を再利用し、和紙の製法を元として作られる「木糸」というものがあります。これは通気性や抗菌防臭性に優れており、紫外線防止効果も期待できるという特性も。 地球にも人にも嬉しい木糸を使ったアパレルブランド「Alveri」は「バンドカラーシャツ」と「コンフォートシャツ」を販売しています。このブランドを立ち上げたのは、alexanderwang(アレキサンダーワン)、MISSONI(ミッソーニ)など、ヨーロッパを中心とする海外のファッション製品の輸入を行う三喜商事株式会社。同社はSDGsへの取り組みとして、スギやヒノキの間伐材を使用した「木糸」でつくられた服などを展開しています。
《世界初となる「木」のお酒》
日本酒や焼酎に加えて、ウイスキーも日本産のものの人気が高まっています。そんな中、いま日本で木のお酒の開発が進んでいて、安全性が確認されれば世界初の「木のお酒」が誕生するかもしれない、という期待が高まっていました。
そしてついに、ベンチャー企業:エシカル・スピリッツ(東京)が千葉県内に蒸溜所を建設し、本格的な生産をスタートさせました。
「木のお酒」といっても、味や香りは木によって様々だそうで、種類はもちろん、樹齢や産地など個々の木によってもフレーバーが変化するというから驚きです。最初のプロジェクトとして、スギ、白樺、ミズナラ、クロモジの4種類を生産しています。
《木材の粉などを原料にした「森のクレヨン」》
株式会社フェリシモは、「more felissimo[モアフェリシモ]」より「木の色の豊かさをみつける 森のクレヨン」の発売を発表しました。多様な木の色が表現された独特の風合いが美しいクレヨンです。
クレヨンのバリエーションは全10種類で、「NO.1 神代木(じんだいぼく)」「NO.2 センダン」「NO.3 ヤマモモ」「NO.4 ケヤキ」「NO.5 カイヅカイブキ」「NO.6 スギ」「NO.7 カツラ」「NO.8 ホオ」「NO.9 ハゼ」「NO.10 ヒノキ」を展開。
着色料は使用せず、国内で採れた木材の粉と、米ぬか由来の原料を混ぜているそうです。
ここでご紹介した木材活用事例はほんの一部です。
究極のえこ素材「木材」の活用は、拡がり続けており、その新たな可能性にはワクワクしますね。
「これまでの常識を覆す」新たな木材活用にも注目してみてください。