1990年〜2020年の30年間に世界で減少した森林面積は、年平均約592万ha。これは1分間に東京ドーム約2.4個分、年間で日本の国土の半分もの森林が減少しているというペースです。このままいくと、100年後には主要な森林が消失し、あらゆる生物の存続に影響するといわれています。
森林は「地球の肺」と言われるほど、地球環境に重要な役割を担っているので、森林破壊は環境問題にも直結する問題です。
なぜここまで急速なペースで森林減少が進むのでしょうか。
それには下記のような原因があります。
◆開発途上国・地域における急速な人口増に伴い、食糧を生産するため森林から農地や牧草地へと転換されたこと
◆地球温暖化による干ばつや猛暑など、異常気象も原因で起こる森林火災
◆燃料用木材や産業用材の需要が急速に高まったことによる、過剰伐採や違法伐採
このようなことが世界の様々な国や地域で起こっています。
商業伐採や違法伐採も森林減少の要因に
急激な森林破壊の主な原因の一つとされているのが、人間による無秩序な森林伐採です。
例えば、熱帯地域で行われる焼畑農業。
焼畑とは本来、木や草原を刈り払い草木を燃やしてから、その土地で耕作したあと他の場所に移すという農法です。これはもともと、土地が回復したら元の農地を再利用するという伝統的な農法でした。 しかし、近年は人工増加に伴い土地が回復する前に焼畑を行うという商業的な焼畑が行われ、森林の再生が追いつかなくなっています。こうして森林の破壊・砂漠化が進んでいます。
そしてもう一つの大きな原因が、商業伐採です。
商業伐採とは自家消費のためではなく、あくまで“販売”を目的とした伐採を意味します。建築資材や加工品の原料として伐採された木材は、そのほとんどが先進国にて大量生産・消費されています。途上国で伐採された木材は安価に買い取られ、先進国に持って行かれます。森林を切り開き、工業団地や農地、リゾートなどが多数作られ、さらに急激に減少しているのです。
本来、伐採は自然を守っていくために必要な作業ですが、適切な管理やルールを破ると、それは森林の破壊につながってしまいます。
違法伐採とその対策
違法伐採とはその名のとおり、それぞれの国や地域の法律やルールに反して森林の伐採を行うことです。
例えば以下のように、森林から私たち消費者の手に届くまでの過程で法令に違反する行為があれば、その木材は「違法伐採」とされます。
◆許可された量、面積、区域等を超えた伐採
◆国立公園や保護区の森林など伐採が禁じられている場所での伐採
◆所有権・伐採権がない森林を伐採するいわゆる盗伐、得るべき許可を受けない、または許可証を偽造した伐採や木材取引
◆先住民族などの権利を不当に侵害した伐採 など
(環境省ホームページより)
世界に流通する違法伐採木材や木材製品の規模について、貿易額は世界で63億ドルにものぼるという説もあります。
2015年6月のG8エルマウ・サミットでは、主要な熱帯木材生産国から輸出される木材の50%~90%が違法伐採によるものであり、他の地域も含めると違法伐採による木材は世界消費量の15%~30%を占めると報告されています。
また、この問題は木材生産地の環境や周辺住民の暮らしを破壊するだけではありません。盗伐や脱税などでコストをかけずに生産された違法伐採木材が、不当に安い価格で国際市場に流通することで、持続可能な森林経営を阻害することも。違法伐採木材が世界の木材流通価格を 7〜16%も押し下げているという報告もあります。
様々な弊害を生む違法伐採を取り締まろうと、いろいろな対策が進められています。
社会的・経済的側面もあり、当事国だけでの解決は難しいため、世界全体が協力して森林の整備・保全を進めるとともに、違法伐採の取り締まりや違法木材の使用禁止など国際的な取り組みが求められています。
違法伐採木材への対策については、2008年のアメリカによる「レイシー法」改正をはじめ、2012年のオーストラリアによる「違法伐採禁止法」 、2013年のEUによる「木材規則(EUTR)」、2020年の中国による「改正森林法」、ベトナムは2019年に「森林法」を施行して、「木材合法性証明システム」を導入、など。
近年改めて、各国で違法伐採木材に対する法令を制定・見直していく動きがあります。
1992年、国連で初めて森林についての議題が取り扱われ、初の世界的合意「森林原則声明」が採択されました。
この声明では、地球規模課題のひとつとして、各国・関係国際機関などが協力して、持続可能な森林経営を推進し解決すべきという項目が規定されましたが、これは法的拘束力のないものでした。
しかし、この地球サミットが、各国が森林の保護に向けて動き出していくきっかけとなったのは確かでしょう。
SDGsにも森林破壊の対策にかかわる達成目標が
森林伐採や持続可能な森林管理について、世界共通と呼べる目標がないことが長らく森林伐採問題の課題でした。
そんな中、2015年に国連で採択されたのが、17のゴールと、それを達成するための169のターゲットから構成された「持続可能な国際目標(SDGs)」。これは、持続可能でより良い社会の実現を目指す世界共通の目標であり、 気候変動対策や生態系保全など、あらゆる目標に森林の保全や持続的運営が関係しています。国際的に積極的な取り組みを促すSDGsは、森林破壊対策の推進に欠かせない存在となっています。
【 15 陸の豊かさも守ろう】
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する。(出典:外務省)
◆森林資源を利用する際は持続可能なかたちで。
◆劣化した森林を回復するために、植林や再植林を積極的に行うべき。
◆開発途上国に対して、森林保護が可能になるような幅広い支援が必要。
といったポイントがあります。
適切に伐採された木材しか使わない
日本でも2000年のG8九州・沖縄サミット以来、「違法に伐採された木材は使用しない」 という考え方に基づいて、違法伐採問題を一貫して重要視してきました。
2017年に制定されたクリーンウッド法(合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)では、原産国の法令に適合して伐採された樹木を材料とする木材・その製品の流通及び利用を促進することを目的として、対象となる木材等や木材関連事業者の範囲、登録制度等を定めるとともに、木材関連事業者や国が取り組むべき措置について定めています。
私たち院庄林業のような木材を使用する事業者にも、責任ある木材調達が求められています。
院庄林業でも多くの輸入木材を使い製品を作っていますが、その材料を入手するにあたっては、健全で公正な調達活動を働きかけています。
◆持続可能な管理が行われている森林からの調達
◆調達する木材や木材製品のトレーサビリティ(どこでどのように作られたのかを追跡すること)に努める
これは国産材や県産材でも同様に、証明や認証制度を活用し、合法木材の使用を推進しています。
これからも木材を使う事業者としての責務を果たせるよう、合法木材の使用はもちろん、植林や森林管理など包括的な取り組みで持続可能な地球環境に寄与できるよう、取り組んでいきたいと思います。