紅葉の美しい季節ですね。
樹木についている鮮やかな葉だけでなく、足元に降り積もった落ち葉も、その美しい色合いで私たちを楽しませてくれます。
落葉樹と常緑樹
木には落葉樹と常緑樹があります。これらは、葉が常にある〈=常緑樹〉か、葉の無い時期がある〈=落葉樹〉と定義されています。
秋に紅葉し、冬に葉を落とすものが一般的に落葉樹と呼ばれるもので、一年を通して葉をつけているものが常緑樹と呼ばれます。
常緑樹の葉も、ずっと同じ葉がついているのではなく、1年~数年ほどで落葉し、少しずつ生え変わります。落葉樹のように葉が一気に落ちないので、家の生垣などの目隠しに適しているということから、庭木にもよく選ばれます。
対して落葉樹は、葉の寿命が1年以内で、通常冬にすべての葉を落として休眠状態に入る時期をもつ樹木です。
そもそも植物にとって葉は、光合成によって植物の成長に必要な養分を作り出すための器官。そして、根から吸い上げた水分を蒸発させる働きもあります。
落葉は、寒さが厳しく水分の乏しい冬に起こります。寒さが厳しく水分を十分に吸収することができない冬に葉を落とすのは、水分不足で枯れてしまわないためです。葉を枯らして水分不足になることを避けようとします。そうして冬は活動を抑制し、休眠します。
落葉は、冬を越し、自分の身を守るための手段なのです。
〈常緑樹〉 椿、オリーブ、松、杉、ヒイラギ、レモン、金木犀 など
〈落葉樹〉 ヤマモミジ、桜、イチョウ、アオダモ、スモークツリー、木蓮、ハナミズキ など
落ちた葉はどこに行く?
山林では秋や冬にかけて、大量の落ち葉が地面を覆い尽くします。アスファルトなど舗装された場所に落ちている葉は、人が掃除しないとそのままですが、山林や森の落ち葉は、ずっと蓄積されていくわけではありません。
地上に落ちた葉は、次第に細かくなり、腐りながら土と混ざり、栄養のある土へと変わっていきます。そして春になると新たな植物の誕生や植物の成長へと繰り返して行われます。
まず ………“分解者”たちの食事に
土の中には、土壌動物や微生物といった“分解者”がいます。小さいものでは体長0.01mmほどの原生動物、0.2〜2mmほどのダニやトビムシなど。そしてミミズやムカデ、大きな動物ではモグラなどが含まれます。健全な温帯の森林では、人間の片足の下に1,000種類もの原生動物がいるといわれています。
森の上に降り積もった落ち葉や枝は、まずミミズやワラジムシといった大型の土中動物が食べて細かくします。 さらに細かい葉はダニやトビムシが食べて、さらに細かくなります。 落ち葉や枯れ枝といった有機物は、このように地中生物に食べられ糞として排出されることで、団粒状に。 また、ミミズは土の中にトンネルを掘って土壌を耕し、水や植物の根が通りやすい土壌をつくってくれます。土の中に空気の通り道ができることで、土中の微生物の働きが活発になり、有機物の分解が速く進んでいきます。
次に ………微生物
森林の土壌には、微生物もたくさん存在しています。これらも“分解者”としてとても重要な役割をもっており、土壌中で有機物を無機物に分解するには微生物の存在は欠かせません。
土壌生物が食べて排出することによって細かくなった有機物に、菌類・細菌類からなる微生物が侵入し分解することによって、有機物であった落ち葉や枯れ枝、 動物の糞や死骸などを無機物へと分解していきます。
有機物を腐らせて無機物に戻す、このサイクルを土壌生物と微生物が担っているのです。
そして ………無機物が植物や木の栄養に
植物は、有機物をそのままのカタチで吸収することは出来ません。上記のように分解によって無機物となったものが、植物が根から吸収できる栄養素になります。こうして育まれた『豊かな土壌』が『豊かな森林』をつくっていってくれるのです。
二酸化炭素を蓄積する働きも
森林が二酸化炭素を吸収し、酸素を放出する。だから森林は地球温暖化防止に貢献している、ということは皆さんもご存知でしょう。
地球温暖化の防止には、温室効果ガス、二酸化炭素を増加させないことが重要です。そして森林は、その吸収源として大きな役割を果たしています。 森林を構成している一本一本の樹木は、光合成により大気中の二酸化炭素を吸収するとともに、酸素を発生させながら炭素を蓄え、成長します。
森林を支えている土壌や地表を覆っている落葉などの堆積有機物は多量の炭素を含んでおり、堆積有機物も樹木や土壌とともに炭素貯蔵庫として大気中の二酸化炭素固定に重要な役割を果たしています。
その堆積有機物による炭素貯蔵について、森林総合研究所がデータを収集、整理し、それに基づいて日本の森林全体における堆積有機物による炭素蓄積量を推定した調査結果も出ています。
集計の結果、1990年時点の日本の森林における堆積有機物量は4.1億トン、その炭素蓄積量は1.7億トンと推定されました。1.7億トンという数値は、1990年時点における日本の森林の樹木による炭素蓄積量(9.8億トン)の約1/5にあたります。また、1990年に日本で排出された二酸化炭素の半年分強に相当するそうです。堆積有機物は森林の伐採、集材作業など土地利用変化に伴い大きく変動する可能性があり、二酸化炭素固定源としての森林の機能発揮には堆積有機物の維持・保全に配慮した森林の取り扱いが重要であることも分かります。
国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所HPより
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2001/20ono.html
自然界の物質循環
落ち葉が生物によって分解され、また植物の栄養となる。このように自然界は物資が循環することで成り立っています。
光合成 → 植物 → 動物 → 植物・動物遺体〈落葉・落枝・排泄物・死体など〉→ 微生物 → 光合成原料 → 光合成 → 植物…..
自然界における必要物質が循環する、この「物質循環」という現象は、自然界永続のための基本といえるものです。
物質循環とは、「生態系の中で物質が物理的、化学的性質を変えながら循環すること」。
大気中の二酸化炭素が光合成生物(植物や植物性プランクトンなど)によって取り込まれ、草食動物(1次消費者)や肉食動物(2次消費者)などに捕食されて個体間を移動し、その死体や排泄物は分解者が分解し、土壌の養分になったり、二酸化炭素として大気中に放出されます。
このサイクルが地球環境を正常に保つためには必要不可欠であり、言い換えれば、あらゆる環境問題は、物質循環の乱れに起因するとも言えるのではないでしょうか。
自然界で成立するこのサイクルを妨害しないことが、私たちの生きる地球環境に大切だということですね。
落葉と林業の関係
昔から林業において、「冬」は伐採に適した季節だと言われてきました。
これは先ほど述べたように、落葉樹は冬に休眠状態に入り、木の中に含まれる水分が少ないことも関係します。
また、年輪に夏目と冬目があるように、暖かい時期と寒い時期では成長幅が違います。木の活動が停止している時期に伐採することが、良質な材にすることを、昔の人はよく知っていたんですね。また、休眠期に入っている樹木は樹液が流れ出にくく、伐採後も乾燥しやすいという特徴を持っています。そのため伐採した木を資源として使う場合、締まりのよい質の高い資源となるのです。
運搬においても、重機や機械がなかった時代、切り出した木の搬出は大変な作業でした。雪国の山間では、雪上で丸太をソリに乗せ滑らしたり、雪解け水を利用し、木材を上流から下流に流送(運搬)することもあったそうです。
今では、機械や重機の発達、そして乾燥技術や設備の向上など、年間を通して伐採・製材が行えるようになりましたが、
昔の人は自然の摂理に従い、営みを続けていたということが分かりますね。